仲村一男のエッセー

色彩は音の様に、とても自由で此れ程抽象的な物はない、私は色以外なにも無い程、色を愛して居る。物の質感、感情トーン、動き等、すべて色彩で現せるのじや無いかとさえ思う。
色を塗り、重ね、叩きつけて居ると、一瞬、ぴたつときまる時が有る、もう勝負が有つた様なものだ。自分の気持ちにぴつたり合つた時、とても嬉しい、私はもう三年程、赤と取り組んでいるが、まだまだ止められそうに無い、太陽とか、火など燃えているものが好きで、ついパレツトに赤を盛り上げる。私は色彩の彩を輝くと云う字に置き変へて考えているが、昔から良い絵は皆、色がかがやいている様に思える。
チユーブから出したての絵具は生き物だ、こいつを何うしてやろうかと考える時、実に楽しい。ギラギラ光るチユーブを手に、何とも云えない重みを感じる、私は幸せだなと思う、色は実に自由だ。

 

※「第11回関西独立展目録」(1959)

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