仲村一男のエッセー

 

 来年が来ると、私も満55歳になる。もし会社にでも勤めて居れば、今頃は定年の事で色々と考えているだろう。私もここいらで、ぼつぼつ大きな飛躍がしたく、来春あたり、是非欧州へ出掛けたいと思っている。
 今年の独立展にはライオンを描いているが、過日ある週刊誌の表紙に、わたしの梟の絵が、掲載され、その時の作者の言葉の中で、鳥を描く面白さについて、色々と書いたが、皮肉なものでその直後に猫の絵の変わったのが出来、急に動物にも興味を持つ様になった。ライオンなど二、三十枚続けさまに描いたが、中々楽しい。
 来年の独立展には、多分欧州の風景を出品する事と思うが、今迄の鳥や、動物の絵とは、暫くお別れしなければならない。一寸淋しい気もするが、それが又、かえってしみじみとした愛情に変わり、愛撫したい様な気持ちで、今の処毎日動物を描いて、楽しんでいる。

 

※「第33回独立美術」(1965)

[エッセイトップ]

[1] [2] [3] [4] [5] [6] [7] [8] [9] [10] [11] [12] [13] [14] [15] [16] [17] [18] [19]