仲村一男のエッセー

 

 四才になる末ッ娘の留美子が、近頃忍術ごっこ遊びを覚えて、盛んにドロンドロンと消える真似をする。私が顔を見ないようにして、見えないよというと喜んでいる。又ドロンドロンといって現れたといい、私の前に顔をつき出す。今度は何度やっても見えないというと、しまいには、お父ちゃん出るようにして呉れといってベソをかき出す。
 今日も隣の男の子の前で、得意になって何べんもやったそうだが、留美ちゃん一寸も消えてないよ、といわれ不思議そうな顔をしていたそうだ。面白いものです。

 

※「独立美術」26回展集(1958年10月)

 

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